2024年4月より新診療体制となります

2017年に開院して以来池田医師、仲田医師の2名を中心に診療を行ってまいりましたが、新たに2024年4月から淡路医療センター皮膚科部長の吉崎医師が入職し、常勤3名体制となりました。神戸掖済会病院でも以前皮膚科部長をされていましたのでご存じの方も多いと思います。
このように基幹病院部長級のキャリアの医師が常勤で3名所属するクリニックは全国でもかなり珍しく、この利点を活かして難しい症例は3名で相談しながら、また最新医療をしっかりと取り入れながら今後も診療していきたいと考えます。
外来担当医につきましては医師の増員に伴い池田医師が手術や処置に専念する枠を設けるなど、変更がございます。電子カルテにてどの医師が診察しても情報共有できるようになっており、また必要に応じて適宜医師間で情報交換を行いますので3名でのチーム医療として診察させていただきます。医師3名外来の日は待ち時間が大幅に短縮されると思いますのでホームページの外来表を適宜ご確認いただければ幸いです。

今後も大学病院や基幹病院での経験を活かし、「正しい診断」、「医学的根拠のある治療」、保険診療でできない範囲は「通いやすい適正な価格での自費診療」でカバーしていく方針で診療を行ってまいります。
診療体制をより充実させ、我々の知識、経験が地域の皆様の健康維持の一助となりますよう一同研鑽を積んでいきますので今後ともよろしくお願いいたします。

アトピー性皮膚炎の新しい治療

アトピー性皮膚炎は皮膚のバリア機能低下をベースとして皮膚炎を慢性的に繰り返す疾患です。患者さまはフィラグリンと呼ばれる角層のバリア機能を保つ蛋白が生まれつき、もしくは一時的に減っていることが多く、少しの刺激でも痒みが出やすく、掻くことでさらに炎症が起こり、痒みを伝える神経が表皮側に伸びてきて痒みが強くなるといういわゆる「悪循環」を起こしやすいことが特徴です。また皮膚炎があることで夜間の眠りが浅く、そのため日中は眠気で集中力が低下するなど日常生活にも支障がでてきます。
治療の最優先はまず「火事を消すこと」、炎症をなるべく早くおさめて悪循環を断ち切ることが重要です。皮膚炎をおさえた状態をキープしていくことで痒み神経が短くなり、フィラグリン量も増えてバリア機能が戻ってくることが知られています。治療歴が長い方の中には外用薬をやめると症状が戻るので対症療法には意味が無い、と感じておられる方もいらっしゃるかもしれませんが、炎症を鎮静化させた状態を続けることで皮膚機能を正常に近づけていく、というイメージを持っていただきたいと思います。

外用剤について

ステロイド外用剤は現在も治療の中心であり、刺激性が少なく効果も即効性も高いですが、特に顔面では皮膚が薄くなる、毛細血管拡張、ステロイド外用剤による皮膚炎(酒さ様皮膚炎)などの副作用も認められます(適切な量であれば通常副作用は起こりません)。1999年にステロイド以外で初めて抗炎症作用が明らかにある外用剤、プロトピック軟膏(タクロリムス)が登場しました。ステロイドのような皮膚副作用は無く、良い薬でしたが使用初期に灼熱感がでるのが欠点でした。3~5日程度続けて外用すれば灼熱感は無くなるのですが、刺激感により使用できない方も多かったようです。現在、炎症の原因をよりピンポイントでおさえるコレクチム(JAK阻害薬)軟膏(生後6か月から使用可能)、モイゼルト(PDE4阻害薬)軟膏(生後3か月から使用可能)など、皮膚に対する副作用がほぼ無いながら刺激感が少なく炎症をおさえる作用がある外用剤が選択できるようになっています。欠点はステロイドと比べて即効性に欠け効果もやや劣ることであり、急性期には余り効果を感じないかもしれません。現在ではまずステロイドで炎症を抑え、長期的にはこれらの外用剤に移行していくというケースが増えています。選択肢が増えてアトピー治療=ステロイド外用のみ、という時代では無くなっています。

全身治療について

2018年に重症アトピー性皮膚炎に対する生物学的製剤、デュピクセントが認可され外用治療のみでは症状がおさえきれない重症患者様に対する治療法が大きく変わり、その後も新薬が次々と登場しています。デュピクセント(生後6か月から使用可能)はアトピー性皮膚炎の炎症の原因となっているサイトカインであるIL-4とIL-13をピンポイントでおさえる薬剤であり、高い効果がありながら安全性も高いのが特徴です。欠点としては・副作用として結膜炎がよく起こること(通常点眼で改善します)・注射薬であること・薬剤費が高価であることが挙げられます。他に注射薬としては抗IL-13製剤のアドトラーザ、主に痒みを強くおさえる抗IL-31製剤のミチーガなどが承認されています。
また、内服薬として別経路で炎症をピンポイントでおさえるJAK阻害薬(オルミエント、リンヴォック、サイバインコ:12歳から使用可能)があります。デュピクセント等の抗体製剤よりも効果が出るのが早く、一般的に有効性もさらに高いと言われています。欠点としては免疫低下作用などがあるので投与前検査(血液検査、胸部レントゲン)、定期的血液検査(開始から1、3、6か月後 以降6か月ごと)が必要であること、薬剤費が高価であることです。デュピクセントは抗体製剤であるためある程度の期間使用することが必要ですが、これらJAK阻害薬はひどいときを乗り切るため短期間のみ内服(1~2週間程度)することも可能です。学生の方が試験前のみ内服して勉強に集中する、就職面接前に集中的に治療する、といった使用法も考えられると思います。幼少期からアトピー性皮膚炎が続いていて塗り薬でもおさまりきらなかった患者様の中には、これらの薬を使用して「初めて全身が痒くないという経験をした」とおっしゃる方もおられます。
当院ではこれらの新しいアトピー性皮膚炎の治療薬を処方可能であり、患者さんの皮膚の状態、重症度に応じて、またコスト面も勘案しながら治療法を提示させて頂きます。